2012年度
優秀賞 / 芸術資料館買い上げ 作品

優秀賞 / 芸術資料館買い上げ

つちのなり ツチノナリ

浅埜 水貴 アサノ ミズキ

美術学科 日本画専攻

H 1818 x W 2272 mm 150号

岩絵の具、麻紙

 水牛の角の配列のリズムが印象的な作品です。柔らかい毛や 動物の体温、荒々しい筋肉の動き、獣のにおいや質感が画面 全体を濃密に覆い、その塊から切り取るように隙間の空間を 描いていく。モチーフも空間も画面の中で同じ価値で扱い、 画面全体を統一された色彩、筆致で描きながらも、しだいに 犇めく水牛の姿として骨格から再構築されてゆく、最終的な 完成作品から作者の造形のプロセスが感じられる良作である と考えます。

優秀賞

未生 ミショウ

森井 崇正 モリイ タカマサ

美術学科 油絵専攻

H 1800 x W 1600 mm

油彩、キャンバス

 卒業制作作品「未生」1800×1600mmは、彼が卒業制作を手がけたアトリエ内 の一隅の室内風景である。この作品の完成形は実のところまだ先にあるかもし れない。テーマを「アトリエの一隅」と定めてから、彼にとっての何気ない日 常と刻々と変わる心理的な変化に従って、その都度画面に何度も上描きを組み 立て直して取り組み、人物やアトリエ内の物に卒業制作期間の終わりまで幾度 も描き込みや大幅に修正と繰り返された。題名も「未生」(みしょう)と正に その通りである。常に『描いていたい』という姿勢に、ひた向きな意思を感じる。

優秀賞 / 芸術資料館買い上げ

ここではないどこか ココデハナイドコカ

中島 晴子 ナカジマ ハルコ

美術学科 彫刻専攻

H 2030 x W 440 x D 550 mm 120kg

 「ここではないどこか」は、「浮遊感」をテーマに挙げ、風を受けながら浮遊している女性の姿を表現した木彫一木造りの作品です。体幹をわずかに傾け、髪の毛やワンピースのスカート部位を膨らませることによって空気感や風を表現し、台座と本体の関係性を不安定な状態とすることで、重たい素材を視覚的に軽くみせる効果を導き出しています。また、制作当初の計画にあった彩色を施さない代わりに各部で彫り方を変え、鑿痕に変化を持たせることで露出している肌と衣服との質感の違いを表現しており、時間を懸けて丁寧に彫り込まれた表面からは道具に対する意識と、木の性質を理解しようとする姿勢が見受けられ好感がもてる作品となっています。

芸術資料館買い上げ

白物語「サッちゃんの冒険」シリーズ シロモノガタリ「サッチャンノボウケン」シリーズ

高橋 はるか タカシマ ハルカ

デザイン工芸学科 視覚造形

H 206 x W 190 x D 22 mm
H 206 x W 190 x D 22 mm
H 206 x W 190 x D 15 mm

ケント紙にエンボス、グレーボール

 版画(ディープエッチング)による、エンボス(空押)表現だけで制作された絵本である。色彩等の平面表現を構成する要素を削ることで、「見る」行為を能動的に転換するこの仕掛けについて、「見える/見えない」という関係性を「夢/現(うつつ)」に読み換えている。その上で「夢」について焦点を当て、学部時代の一貫した制作テーマにした。「夢」とは、つまるところ子供時代の比喩であり、これに付随する一連の制作とは自己言及である。

優秀賞

籠唄 カゴウタ

菅原 有加 スガハラ ユカ

芸術学研究科 絵画専攻 日本画

H 1818 x W 2273 mm 150号

和紙、岩絵の具 、膠、金属箔

 画面を埋め尽くす睡蓮の上に目をとじる人物を配した作品です。題名の〝こもりうた〟とは眠るように目を閉じる人物に対する〝子守唄〟の意味と、〝内に籠る、言葉に籠める〟といった精神的な意味、また、水草が水面を覆い水が見えない状態をさす〝籠り沼"(こもりぬ)という数種の言葉で、多重の意味を持たせているようです。画面構成も水面上に人物が浮かぶように配置させるなど現実にはあり得ない多重の構造となっています。実景とは異なる物理法則から生まれる軽やかなイメージと同時にある種の重厚な実感をもたせるという、相反する表現を両立させているところが、この作品の価値であり評価するポイントであると思います。

優秀賞

望まれた愛は風に消える ノゾマレタアイハカゼニキエル

五嶋 千絵 ゴトウ チエ

芸術学研究科 絵画専攻 油絵

H 1455 x W 2273 mm 150号

白亜地、テンペラ、油彩

 麦畑の中で身を屈め、虫がいなくなった虫カゴを抱える少女は何を想っているのでしょうか。 ありふれた日常の自然に共感を覚えて作品のテーマにしてきた作者は、制作の合間に自らも農作業に親しんできました。作者が麦畑の中で作業の手を休めた時ふと気付いた、消えてはまた生まれる自然の生命の限りない循環への感動を素直に描いています。淡々として執拗に描かれた世界は、絵を描く表現行為もその自然の循環の一部であって欲しいと願っているかのようです。地道な取材と作業を重ね、明るい色調とあいまって希望に溢れた作品に仕上がりました。

優秀賞

コーラス

山川 真紀 ヤマカワ マキ

芸術学研究科 彫刻専攻

H 300 x W 570 x D 1960 mm 600kg

御影石

 本作品「コーラス」は、作品に触れたり座る等して、石の材質感や作品の形状を体感してもらうことを主目的として制作されている。公園等の公共の場所に設置して、子供たちが此の作品の上で跳ねたり、寝そべったりして遊べるようにハードエッジは一つもなく、母性の様な常に優しく親近感が持てる形状に設計されている。黒御影石は石材の中では最も硬質で加工や磨きが困難なものであるが、石に自己の思いをしみ込ませるように長い時間をかけ丁寧な仕上げを行っており、曲面の連続性を造形的に厳しく追い求め、全体的な統一を図っている。

優秀賞

di vision ディビジョン

宮定 亨昌 ミヤサダ キョウスケ

芸術学研究科 造形計画専攻

4’00”

インスタレーション映像

 作者の主たる研究内容は映像コンテンツとしての表現であったが、今回の作品は"場"を設定し、さらに音響設計も自ら手がけ、映像を用いた空間表現として展開した作品である。エレクトロニカと称される音楽カテゴリーの楽曲を制作し、その制作手法でもあるクリック、カットアップといった手法を視覚的な映像表現にも用いることで、見事なシンクロナイズ表現をみせている。映し出される画像は、具体的な要素を排除したシンプルな色面に押さえることにより、より音響空間とのリンケージを計ることに意識を集中させる効果となっている。また、プロジェクションにより等身スケールのスクリーンと、5.1chの音響効果により、圧倒的な迫力を持って鑑賞者の空間を支配する表現になっている。